+ + きみはほんとうにステキだね(3年:道徳) + +


あなたのステキなところ、私にも教えて・・・・・。

 はじめに 

 宮西達也 作。
 自分の不遜さに、これまで一度として気付くことのなかったティラノサウルスと、優しいエラスモサウルスとの出会いと別れ。
 初めての、そしてたった一人の友達を失ったティラノサウルスの、心の底からの嘆きの声を、子ども達はどう受け止めるだろうか?
 
 実は本クラスでは、最近ひとつの悩みを抱えていた。悪気はないのだが、相手の気持ちにまで思いが至らず、つい横暴な振る舞いをしてしまう子がいて、彼とどう接すればいいのか、周りの子も悩み始めてきていた。

 この本との出会いが、互いの関係性を見直す、よい機会となるのではないか、相手あっての自分だということに気付くことができるのではないか、自分も変われるんだという期待と、ここまで変われたという自信と感動を得るきっかけを与えてくれるのではないか、そんな期待をこめて、道徳で扱うことにした。




 指導計画

 <第1時>
 全体の読み聞かせ
 初発の感想(↓)

<第2時> 出会いのシーン
 ティラノサウルスの幸せな気持ちを読み取り、友達とはどんな存在なのか話し合った。

<第3時> 別れのシーン1
 ティラノサウルスの深い悲しみを読み取り、他者との関わりについて考えた。

<第4時> 別れのシーン2(本時)
 ティラノサウルスがなぜ本当の自分を告白したのか、そのわけを話し合うことを通して、恥ずかしくない自分・変わることのできる自分でいようとする心情の育成を目指した。



 初発の感想

・ティラノサウルスは、復讐するべきだ。
・やっつけないと、また誰かがやられる。
・友達を奪うなんて許せない。

 等々、全員が、復讐説に賛成した。その時私は、ちょっと驚いた。誰一人として異議を唱えないのだ。現実とオーバーラップさせ、横暴な子に手も足も出せないでいる自分たちへのいらだちなのだろうか。
 そして、暴力に暴力を持って対抗することが、唯一の解決だと、子どもたちは信じているのだろうか?それは、被害者と加害者の入れ替わりに過ぎず、怒りと悲しみの連鎖でしかないことに、気付かせる必要があると感じた。

 本時(第4時)の流れ

活動1  心情の読み取り
活動2  気付きの発表
活動3  課題追究
活動4  まとめ



    <第4時の記録>
T ティラノサウルスの気持ちを想像してみよう。

<子どもたちの発言>
・ティラノサウルスは、泳げないのに海に飛び込んで友達を助けるなんて、偉い。
・ティラノサウルスは、初めにエラスモサウルスに助けてもらったから、今度は絶対に助けるって気持ちだったと思う。


T ティラノサウルスは、どうしてほんとうの自分を最後まで隠さなかったのかな?
(注:ティラノサウルスは、エラスモサウルスが死ぬ前に、本当の自分は意地悪な乱暴者だということを告白した。)

・本当の友達になりたかったから。
・最後にどうしても本当の自分を知ってほしかったから。
・嘘をつき続けちゃいけないと思ったから。
・ずっと嘘つきのティラノサウルスになってしまうから。
・ずっと隠していたら心が痛んで、また嘘をついてしまうから。
・嘘をついたままだと本当の友達になれないと思ったから。
・一生友達でいたかったから。
・後で言おうと思っていたから。
・嘘のままだと悲しむと思ったから。
・「ウォーーーン」っていう叫び声がかわいそうだ。


T ティラノサウルスの何がステキなのかな?
(注:エラスモサウルスは死ぬ前に「きみはステキなぼくの友達」と言い残してくれた。)

・友達を大事にする、ほんとのいい人になった。
・エラスモサウルスを助けたから、ずっと前のティラノサウルスとは違う。
・はじめは、意地悪で嘘つきだったけど、エラスモサウルスに会って初めて優しい心が生まれた。
・意地悪をしなくなった。
・最後に嘘をばらしたところ。
・ステラコサウルスたちの嫌な気持ちが分かったから。
・もうケンカをしないところ。


T あなたのステキなところはどこかな?

・勉強の時、よく手を挙げて発表する。
・勉強を頑張っているところ。
・みんなで助け合うところ。
・何でも大切にしているところ。
・友達がいっぱいいるところ、優しいところ、健康なところ
・たぶん、優しいところ。
・励ますところ、ニコニコしているところ

 ここでは、「誰にだって、ステキなところがあるよね。お互いにいいところを教え合ったら、嬉しいよね。」「誰でも失敗したり、嫌なことをしてしまうこともあるけど、反省して謝って、成長し合って、また仲良くなることもできるよね。」「これが悪い、あれが悪いって責めるより、心から心配して教えてあげる方が、納得してもらえるかもしれないね。」など、子どもたちの実情と照らし合わせながら、しかし押しつけがましくならないよう注意しながら、言葉をかけた。

 終わりに
 
 ひとりの子どもがわがままをして、周りの子が迷惑を受けるという、彼らのもつ問題に似た設定の物語だったので、実のところ、子どもたちがどこまで自分たちの現実に引き寄せて考えることができるか、気がかりだった。
 傍若無人な振る舞いの子ども(以下、A君)の孤独感を、少しは想像してもらいたいし、また、A君にもみんなの痛みを想像するだけの感性を養ってほしかった。
 もちろん、彼らの問題は、この物語に出会ったからと言って、一朝一夕に解決する問題でもない。特効薬のような即時性など元より期待もしていない。ただ、力だけが解決の手段ではないし、力以外に「強い」ものがあるということだけは伝えたかった。初発の感想で全員が復讐に賛成していたのだから。

 終末で、もう1度、ティラノサウルスは復讐するべきだと思うか、聞いてみた。今度は全員が「復讐すべきでない。」と答えた。「どうして意見が変わったの?」と聞いてみたが、そこを明確に答えることのできる子は残念ながらいなかった。
 
 人間は、変化しながら生きている。自分も相手も、少しずつでも変わることができる。何か失敗があっても、修正しながら、よりよい生き方を目指すことができる。自分への期待と自信をもって、これからも生活してほしいと思う。

 授業後、子どもたちは次のような感想を述べていた。
・ティラノサウルスになりきったように、悲しく泣きそうになった。
・友達がいなくならないように、いつも優しくしていたい。
・たった一人よりも、もっと友達を増やす方がいい。
・助け合うという友情を学んだ。
・ティラノサウルスにはきっとまた優しい友達ができるはず。ぼくにも、もっともっとできるはず。
・両方かわいそうだった。
・人をいじめない、泣かさない。
・悪いことをしてはだめ。
・たったひとりだけど、ティラノサウルスに友達ができてよかった。



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 宮西さんのシリーズは、どれも心を打たれるものばかりだ。「きみはほんとうにステキだね」も、読んでいて、何度も何度も声が詰まった。しかし、心の底が、ほっとする、優しい自分に気付くことのできるお話だった。

 実はただひとつだけ、私自身の中でなかなか決着のつかなかった疑問があった。私なら、死に瀕した友達に自分のことを語れるかということだ。人生の終末を迎えた人に、自分の成長を語ったって、それは自己満足でしかないんじゃないか、利己的な行動なんじゃないかと、ずっと気になっていた。しかし、単元を終え、それは、エラスモサウルスの生を讃える行動だったんだなと思えるようになってきた。そこのあたり、子どもたちと考え合うことができたら、もっといい授業になったんじゃないかと残念だ。

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 この学習をきっかけに、宮西作品を公立図書館で借りてきたり、書店で購入したりする子が増え、宮西作品は、今では我がクラスの大ブームとなっている。

 2学期は、これまた宮西さんのヒット作「あなたをずっとずっとあいしてる」を道徳で扱う予定。今度はもっともっと教材研究して、深まりのある話し合いにもってくゾ〜〜〜〜〜っ!!






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