ひとりひとりの思春期 (第6時・第7時)〜性交〜(第5学年:保健)


1 ねらい
 人間の性交が心身全体を関わらせた親密な行為であることに気づき、自分の性行動は自分で考え決定すべきものだということを理解する。

2  展開
(1) 前時までの学習で子供たちが持った疑問に答えた後、本時の課題「人間の性交について考えよう」を提示した。
  

(2) 人間の性交は動物の交尾とどう違うのか、なぜ行うのか、考えるための観点を示した。ただし、全ての動物が人間と全く違った性行動をするわけではないし、人間も動物の進化の途上にあることから、性交と交尾が全く別のものであるかのような印象を子供たちに与えてしまわないよう留意した。
・ 出産や誕生時期の違い(動物はエサの多い時期だけ・人間は季節に関係なく)
・ 相手の選択(求愛行動の違い)
  (↑ここではちょっと大脳新皮質の学習を想起させたり、バレンタインデーの話をしたりした。
・ 性行動の違い(動物は公然と・人間は秘密裏に)
・ 目的(多くの動物は出産・人間は出産以外の目的もある)   

 ネコやイヌ・昆虫などの交尾を見たことがある子供が多く、「目的」以外の項はどれも簡単に理解できたようだった。人間の性交が生殖のためだけでないと聞き、驚く子供が多かったが、「そんなの当たり前。そうじゃなかったら、ラブホがあるわけない」と答えた女児が一名おり、周りから感心(?)されていた。

(3) ふれあいの心地よさについて、考え合った。まず、ペットとのふれあい、家族や友達とのふれあいを想起させ、心と皮膚が感じる心地よさを確認し、性交も他者とのふれあいの延長上にあることや、心身ともに打ち解けた大人同士の親密な行為であることを伝えた。思春期以降に性的対象を求める気持ちが強くなるということについては、二次性徴の学習を想起させ、射精の快感については、精通の授業を想起させた。
・ 同性や異性・ペットとのふれあい
・ 体毛を失った人間の皮膚の感覚
・ 心の満足感
・ 性交自体の快感
・ 粘膜の感覚・分泌液
 
(4) 人間は、生殖のためだけに性交するのではない。それゆえ、自分のために、相手のために、人間はより豊かに生きることもできるし、反対に、様々な問題に関わらざるを得ないという事実もある。ここでは望まない妊娠の可能性や性感染症・暴力の性等についても触れ、性は他者から強制したり強制されたり、束縛したり束縛されたりするべきものでは決してなく、自分と相手との関係性の中で考え、自分と相手の尊厳を最優先にして自ら決定していくべきものであることを伝えた。

・ 強制(暴力)や支配の性交
・ 売買の性交
・ 望まない妊娠、性感染症
・ ポルノグラフィー
・ 性の自己決定

 巷にはびこるポルノについては、ほとんどの子供が、コンビニ・レンタルビデオショップ・書店・看板等で目にした経験があり、不快に感じたと述べた。
 強制(暴力)や支配の性交、売買される性交については、児童買春の被害者を描いた絵本「こどもの権利を買わないで」(横田洋三監修/自由国民社)と「じゆうのつばさ」(葉祥明 絵・文/国土社)を読み聞かせ、性被害(加害)と自分とのかかわりについて考えさせた。そして、自分の心とからだの主人公は紛れもなく自分自身であり、自分の性行動は自分で考え決定すべきものだということを再度伝えた。
 
 性交の学習を、被害者の立場を語る絵本で締めくくることに、当初は迷いがあった。それは、子供たちに性交についてマイナーなイメージを与えてしまわないか、性を忌むべきものと捉えてしまわないか、また海外で児童買春する日本人も描かれていることから、人間不信に陥ってしまわないか、といった迷いである。しかし、本時後の子供たちの感想を読んで、これらの絵本が子供たちの心を深く捉え、自分の性への責任や性的自己決定の意味について少なからず学んでくれたのだと確信することができた。子供たちの、感じる力・学ぶ力は大人の想像をはるかに超えている。我々大人は、子供たちのよいモデルとなるよう、自分の性と生をきちんと生きてゆかなければならないのだと改めて思った。

<絵本の感想>
・将来、絶対子供を売りたくないし、ぼくが買う方にも絶対ならない。本を読んでもらって、あんなにちっちゃい子供も、みんなすごくかわいそうなことが分かった。病気にもなるのでびっくりした。本当にすごくかわいそうだった。
・罪もないのに病気とかもうつされて本当にかわいそうだった。
・暴力の性とか売買の性はすごくひどいなと思い、悲しくなった。あんなひどいことをする人を許せない。本に出てきた人たちを助けてあげたい。悲しい。
・この勉強をするまで、こんなひどいことをしているとは知らなかった。本当にひどいと思ったし、自分もこんな人間になってはいけないと思った。
・こんなことが世界で起こっているとは知らなかった。
・世の中に貧しい人がたくさんいるから、それを知っていながら買うなんてかわいそう過ぎるから、男の人はやめてほしい。
・男の人はそれで楽しいのか、すっごく不思議だ。
・テレビほしさに子供を売るのなら、全世界の貧しい村の人々にテレビを配給すればいい。
・自分が好きでもない人にされるのはすごくいやだ。性感染症にもなりたくない。

<事後の感想>
・性交って子供がほしくなくても何回もするって分かってびっくりしたけど、自分は自分なんだし、したくなければしなくていいから、よく考えて行動したいと思う。
・どんな大人になれるか分からないけど、人の気持ちの分かる大人にならないとだめだと思った。
・自分の欲望だけで行動できるわけじゃあないことを忘れずにいたい。
・人に迷惑をかけたり悲しませたりしたくない。
・好きな人だけとセックスしたい。
・知らないことがたくさん分かってよかった。
・世の中、なかなか大変だ。自分の力で考えて生きないといけない。
・これからどんな出会いがあるか楽しみ。
・好きな人を見つけたい。
 残念なことに、今の日本には営利主義の商品化された性が、本当にいたるところに見受けられる。子供たちは、性を人権として受け止めないことも多いこの社会の中で、これからも生きてゆかなければならない。どうか、性を人権そのものと捉えるみずみずしい感性をいつまでも失わず、よりよい人生を送ってほしいと、心から願っている。

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