せいきってなあに?
1年:学級活動

 性器は、身体の大切な一部分であるにとどまらず、個人の人格や生き方をも方向付ける要素を持つ、いわばプライバシーの原点でもある。それゆえ、幼いうちから性器のよさ・素晴らしさを正しく知り、性や性器を人格や人権と結びつけて学ぶことには、大きな意味があると私は思う。それらは性の主体者として生きる上で、欠くことのできない学びと言えるだろう。

 
 入学から9ヶ月が過ぎ、子どもたちは学校生活にもすっかり慣れ、毎日を伸びやかに過ごしている。身体的発育もほぼ安定期にあり、性に関して悩みや特別な関心を示す子どもは今のところ見受けられない。しかし、性別意識は徐々に育ってきており、時折異性の友達を疎外したり、反発的な行動を取る子どもも現れてきた。
 子どもたちは、性や、性別を決定づけると思われている性器について、どんなイメージを持っているのだろうか?
 
問 い 回 答
女児12名 男児14名
1 あなたは 女ですか?男ですか? 女(12名) 男(14名)
2 それは なぜですか? おちんちんがないから。(2名)
おちんちんがちがう。
女の子は大きくなるところがある。
おっぱいがあるから。
ひげがない。
女のあそびをしているから。
あそびがちがう。
かみがちがう。
ピンク色がすきだから。(2名)
それは、女は女だから。
ちんちんがあるから。(3名)
せいきがちがう。
ちんちんがちがう。
ちんちん(2名)
ちんちんがながいから。
ちんこがあるから。
おちちがちがう。
まゆげがながい。
男ですから。
男だから。
生まれたときが男だったから。
女と男のちがいは なんだとおもいますか?
 
せいき。
男は、あかちゃんがうまれない。(2名)
おっぱい
ひげ
女が、男だと思ったら男。
わからない。
さべつするところ。(2名)
無回答(2名)
ちんちんがちがう。
ちがいは、かんけいない。
だんだんひげがのびていく。
男はひげがのびやすい。
ひげ(5名)
男は、あかちゃんがうまれない。
うわぐつの色。
体。
おなかの中。
むねがあるところとないところ。
女は、けがちっちゃい。
せいきは どんなところだとおもいますか?
 
大じなところ。(2名)
じょうぶなところ。
せいしのあるところ。
あかちゃんをうむところ。(2名)
男は生まなくて、女は生むところ。(4名)
せいしやらんしのあるところ。(2名)
かっこいいところ。(2名)
プライベートなところ。
かわいいところ。
だいじなところ。(2名)
おなかにある。(2名)
男子か女子か分かるところ。
男にはしきゅうがない。
足のところにある。
らんしやせいしがあるところ。
あかちゃんをうむところ。
あかちゃんがうまれるところとうまれないところ。
無回答
しっているせいきのなまえがあれば、かいてください。
ちょう(3名)
プライベート。
あかちゃんのところ
らんし。
ありません。
無回答(5名)
せいし
らんし
ふつう
しきゅう(5名)
あかちゃんが生まれるところ。
無回答(3名)
じぶんのせいきを どうおもいますか?
大じです。(5名)
大じにしていく。
たいせつ。
まもる。
かわいい。
大じにそだってほしい。
じぶんでがんばっている。
大じ。
ちょーだいじ。
大せつだとおもう。
ふつう。(2名)
ちんちん(2名)
おなかがだいじ。
無回答(3名)

<結果を見て>
 どの子も即答だった。今のところ、性自認に混乱をきたしている子どもはいないようだ。
 男児は外性器に関わる記述が多かった。女児よりも外性器を身近に感じていると言えるのかもしれない。(「ペニス」という言い方については未習。)
 女児の中には、遊び・好きな色・髪など、体と違う部分を挙げた子どもがいた。
「女は女」「男だから」というように、根拠は分からずとも(根拠を示すまでもなく)そう信じている子もいた。
 男女の遊びが別れてきて、女児を遊びの仲間に入れたがらない男児がいる一方で、「違いは関係ない」と回答した男児もいて、意識(人権意識や性別意識)の多様性を感じた。女児の回答の中に、「さべつするところ」というのがあったが、後で聞いてみたことろ、男児からの扱いに不満を持っているようだった。
 女児の多くは、生殖にかかわるものが性器だと捉えている子が多いことが分かった。
また、男児の回答には性器への親しみが感じられる気がした。
 学習前なので無理もないが、腸を性器だと思っていたり、そもそも性器とは何なのか、よく理解できていないようだった。
 性器が何かはよく分からなくても、取り敢えずは自分の体の一部であることだけは理解しているようだ。しかも、肯定的なイメージで捉えているようなので、ひとまず安心した。
 平成9年度、同じ質問を1年生に投げかけた時には、「気持ち悪いところ」とか「汚いところ」などという回答が約1割あったのだが、今回はそういった回答は皆無だった。


* 「プライベート」という言葉については、2学期の学級活動「誘いに乗らない」で既習。
  
 例えば、お風呂でどんなふうに洗えばいいか、トイレでどんなふうに拭けばいいかなどはもとより、みんなで水着に着替える時にどんなことに配慮すればいいかとか、誰かが「見せて」などと言った時どうすればよいかなど、性器がどんなもので、どんな役割を担っているかを知った上で考えるのと、そうでないのとでは、大きな違いがあるだろう。

 また、まるで違って見える男女の性器も、成り立ちは同一で、男女はそう遠い存在などでもないことが、子どもたちにも分かれば、性を理由にお互いを排除したり疎外したりといった行動も、無意味な差別意識によるものであることが分かってくるだろう。

 こうしたことを念頭に、以下の点にも配慮しながら、性器についての学習活動を仕組んでみた。

 卵子や精子を生み出す器官は、子どもの身体にも既に準備されていることを知らせ、自分自身の性に対する自信や肯定感につながるよう配慮した。
 また、性器は赤ちゃんの誕生に関わる大切な働きを持っていることを確認し合い、2年生の「わたしの誕生」の学習への期待が持てるよう投げかけた。
 学習形態は、主に課題追求型のコーナー学習とし、各自の関心に応じて主体的に活動できるよう会場設営を工夫した。
 誰もが学習内容に興味を持って取り組めるよう、クイズの回答を、ヒントカードやチェックコーナーで確認するよう促したり、適宜、探検コーナーにフィードバックするよう投げかけたりした。
 男女の性器には、女性に妊娠・出産の機能が備わっている以外に違いはなく、互いに理解し合い尊重し合える連続的な存在であることが伝わるよう心掛けた。
 教具は、視覚的に確認し易く、子どもにも操作が容易なものを準備・提示した。

 なお、前時に「性についてはなそう!3生命はどうやってできるか」の読み聞かせをし、精子や卵子という言葉の意味や、交尾や性交、受精等についてごく簡単に説明しておいた。
 
 性器の働きを、様々な体験活動を通して知ることによって、自分の性や異性との違いを肯定的に受け止め、自他の存在を尊重する態度を養う。


1 本時の課題を確認する。(5分)
 「前、みなさんに尋ねたら、男は性器があるけど女はないって答えた人や、女にも性器はあるけどどんなのかは知らないって答えた人や、性器って何か分からないって答えた人がたくさんいました。みんな性器のことをあまり知らないみたいなので、今日は私と一緒にしっかり勉強してもらいたいと思います。」
 本時の課題「せいきってなあに?」を提示。

2 内外性器の主な作りや働き、成り立ちを、子どもたちとやりとりしながら説明した。(15分)
 (1)模型を使って男性外性器を説明。
 「これは、男の子が足を開いたところです。どんな役目があるのかな?」

外性器の模型。
手作りです!
 「これは肛門。うんこの出る穴ですね。」
 「肛門のそばのこれは何かな?
昔は「いきのたま」「いきんたま」と呼ばれていましたよ。精巣と言って、赤ちゃんのもとになる精子を作る大切なところです。伸びたり縮んだりする便利な皮に包まれて大切にされています。この皮はものすごい働き者、暑いときにはしわを伸ばしてだら〜んとなり、身体から少しでも離れようとします。逆に、寒い時にはしわを縮めて縮こまり、身体に近づいて温まります。」
 「これはペニスです。ペニスも皮に包まれています。ペニスの先には穴が開いていて、おしっこが出ます。大人になると、ここから精子が出せるようになります。」
 (2)パネルで男性内性器を説明
 「お腹の中にも性器はありますよ。絵をよく見てね。精子もとても大切なものだから、お腹を通ってからペニスに送られるんですよ。」

 (3)模型を使って女性外性器を説明。
 「さあ、いよいよ女の子の性器だけど、女の子にも性器はあると思う?ないと思う?これは、女の子が足を開いたところです。」
これも傑作・・・のつもり
 「肛門はすぐ分かりますね。うんこの出る穴です。」
 「この小さな穴はおしっこの出るところ。」
 「この穴も、何かが出てくるところです。それは赤ちゃんですね。この穴は「ワギナ」と言って、身体の中の方につながっています。」
 「このヒダヒダや、そのまた周りのぷっくりしたところは、大切なワギナを守っています。囲まれて囲まれて守られているんですね。これらが、女の子の外から見える性器です。」
 (4)パネルで女性内性器を説明
 「ワギナは、ここにつながっています。ここは子宮です。レモンくらいの大きさで、卵子と精子が出会って受精すると、ここで赤ちゃんは育ちます。ここの壁は人間の身体の中で一番よく伸びる筋肉でできています。それに、とっても大切な場所だから、腰の大きな骨に囲まれた、身体の奥の方にあります。」
 「ここは卵巣。卵の元がつまっています。女の子のお腹の中には、生まれた時からもう卵子の元があるんですよ。大人になると、卵子が出るようになります。」
 「男と女の性器の形って結構似てると思わない?でも似てるのはお腹の中の性器だけではないんですよ。」
 (5)パネルで外性器の分化(未分化時・3〜4ヶ月胎児・出生時)を説明
 「実はね、あなたがまだお母さんのお腹の中にいた頃、外の性器は男も女も同じ形をしてたんですよ。こんな形。男と女、どっちの性器に似てるかな?」
 「お腹の中で育つうちに、こうやってだんだん形が変わり女の子は女の子の性器、男の子は男の子の性器になって生まれてきたんです。」
 「ここは、女はそのままで、男は伸びてくっついてペニスの長いところになりました。」
 「ここも、女はそのままで、男は伸びてくっついて精巣になったんだけど、その証拠に、ペニスの裏や、精巣の袋の真ん中には、縫い目がありますね。伸びてくっついた証拠です。」
 顔や手足を大事にするのと同じに、自分の性器も友達の性器もいつも大切にして楽しく生活しようということや、プライベートなところなので、見たり見せたり触ったり触らせたりしてはいけないということを再度確認した。 
 また、ここで少々質問を受け付けた。双子はどうやってできるのかとか、臍の緒はどこと繋がっているのかとか、卵管や輸精管についての質問などがあった。


  3 各練習コーナーを自由に巡り、活動した。(15分)
 「それでは、これから後は、自分のやり方で勉強しましょう。クイズコーナーに行ってクイズに答えたり、ぬり絵コーナーでぬり絵をしたり、パズルコーナーで、性器のパズルをしてみたりしてみましょう。」
  
パズルコーナー ぬり絵コーナー
男性の内性器は簡単だったみたいだが、女性内性器は意外に手こずっている子もいた。「こことここが繋がらないよ。」などと言いながら、楽しそうにやっていた。 「精子の通り道に色をぬりましょう」「子宮に色をぬりましょう」などの問いが書いてある4種類のぬり絵を用意した。
クイズコーナー 探検コーナー
性器の名称や働きを問う2種類のクイズを用意した。 クイズの答えやぬり場所が分からない時に、ヒントを探しに来るところ。チェックコーナーでチェックを受けた後も、ここで確認するようにさせた。絵のそばのピンクのカードをめくると、答えが見えるようにしておいた。
自由に活動しているところ プレゼントコーナー
黙々と、楽しんで活動できた。みんな成長したなぁと感じた。 子どもの性器と同じサイズの性器の絵を、色画用紙に人数分、印刷しておいた。子どもたちは、お腹にあてるなどして、自分の性器の位置や大きさを確認していた。
 感想を話し合った。(10分)
 「練習コーナーは、おもしろかったかな?初めて知ったこととか、すごいと思ったこと、気を付けたいことなどはありますか?グループの友達と話し合ってみて下さい。」
    <子どもの反応>
    ・ お腹の中のことがよく分かった。
    ・ 子宮はすごい筋肉に包まれていることが分かった。
    ・ ペニスとか、ワギナとか、精子や卵子のことが分かった。
    ・ 生むところが分かった。
    ・ 子宮が臍の緒と繋がってるのがすごい。
    ・ 赤ちゃんが子宮から出てくるのがすごい。
    ・ 外の性器がお腹の性器と繋がってるからすごい。
    ・ 2年生でする臍の緒の勉強が早くしたい。
    ・ 精巣の中身が見てみたい。(男児)
    ・ あんなに身体にいっぱいあるって知らなかった。
    ・ お腹や性器をけられないようにしたい。たたかれないようにしたい。
    ・ 身体をちゃんと守りたい。
    ・ 自転車のきまりを守る。(私が「え?」と言うと、「危ない乗り方をしたら股を打つから」だそうだ。)
    ・ 車に気を付ける。(これも、身体を大事にするという意味。)
    ・ 死なないようにする。
    ・ 身体全体を大事にしたい。
    ・ 身体を大事にして、大きくなっても大事にしていいんだと思った。
    ・ 男のペニスも大事なんだな。(女児)
    ・ 性器っていっぱいあるな。(男児)
    ・ 知らないことがいっぱいあったけど、いっぱい知ったからよかった。(女児)
    ・ けってくる人に、「やめて」って言おうと思う。

次時以降

子どもの作った からだパズル

 次時ではまず、身体のよさがしみじみ感じられる絵本、「からだっていいな」(山本直英 著)の読み聞かせをした。

 その後、子どもたちの方から、自分たちも、からだパズルや、からだカルタ、からだクイズを作ってみたいとの発言があったので、次の1時間で作成し、1時間で遊び合った。
 手作りしただけあって、みんなとても楽しそうに遊ぶことができたし、何よりも、成長を喜び合ったり、学習内容を振り返る内容のものばかりだったので私も嬉しかった。生活科で学習した、「お正月の遊び」の遊び体験も生かされていて(いろんなコーナーに順序よく行って遊んだ。作者は、各コーナーのお世話もしていた)、子どもたちの成長する力、転化させる力を感じた。
子どもの作った からだかるた(読み札)
だいじなところを けってはだめだよ
スピート出る足 すばらしい
おならおなら くさいおなら すごい くさくなったおなら
くびは よくうごくよ
たべものたべる口 おしゃべりもできるよ
きんにくもりもり すごいでしょう
こうもん なんで こうもすごい
2こある だいじな せいそうだよ
からだがげん気で たのしいな
しきゅうは すごいものだよ
さけは たまごをうんで せいしをかけるよ 
うみのいるかは おなかとおなかをくっつけて せいしを おくるよ

保護者の感想
アンケートより
 今回の、保護者の感想は泣ける(!)ものばかりだった。私は日頃から、「1人でも分かってくれたらそれでいいや。」って思って授業をしているが、こんなにたくさんの保護者に私の思いが伝わって、嬉しく思う。授業後も、たくさんの保護者が駈け寄り、模型を見せてほしいとか、とても勉強になったとか、教具がよかったとか、いろんな励ましの言葉をかけて下さった。

「教育は人なり」とは本当によく言ったものだと思います。先生の子どもたちに対する愛のなせる技だと思いました。たくさんの手作りの教材に、本物の「命の尊さ」を伝えたいというお気持ちが見てとれました。子どもたちは大人と違って、真理の追求にまっすぐに突き進んでゆくでしょう。これからもどうぞよろしくお願い致します。
参観日、お世話になりました。先生は本当に何でも一生懸命取り組まれる方なんですね。それも、とても楽しそうに。それが本当によく分かりました。クラスもとても落ち着いていて、集団として、ずいぶん成熟してきたように思います。
模型を使っての説明は、とても分かりやすかったと思います。
親も勉強になりました。先生の手作りには大変感心しました。
自分たちの頃にはなかった教育なので、少しびっくりした。いろいろな犯罪が低年齢化する中で、正しい知識を知るのはいいことと思う。
1年生でここまで教えるんだというのが率直な感想です。そこまで教えなくても、という気持ちと、情報が氾濫している世の中なので、間違った情報を得るよりは、早くから正しい事を教えるほうがいいという気持ちと複雑でした。
子どもに正しい性器の名称を教えておられたことに最初は驚きましたが、授業を見せていただくうちに、正しい知識があれば、変にいやらしいもの、けがらわしいものと考えなくなるのではないかと思い、小さい頃からの性教育の大切さがわかり、よかったです。
イラストや手作りの模型を使ってわかりやすく丁寧に教えられていてよかったと思います。親自身、子どもの疑問にどのように答えてあげたらよいか参考になりました。情報があふれている中で、正しい知識を身に付けてあげるためにもよいと思います。
私達も勉強になるようなことも話されたりして、とてもよかったと思います。
とても詳しく分かりやすい内容でした。子どもたちも、よく理解できると思います。
今まであいまいにしていた事が、はっきりわかったのではないかと思います。
想像していた内容よりも具体的な内容で、少しびっくりしましたが、子どもは素直に受け入れていました。
参観して、とても勉強になりました。
とても活発に、楽しそうに授業を受けていました。クイズの答えを合っているか親に持ってきてくれて、触れ合うこともできてとても楽しかったです。

<p.s.>
 性器の学習は、幼ければ幼いほどよいということを、私は常に感じている。幼いゆえに、学んだ事が記憶に残らない子も多数いるだろうが、それでいいとも思っている。それまで意識すらしていなかった身体の一部にも目を向け、大事に思うことができたし、自分も他人も大切な存在なんだという思いを、子どもたちや保護者たちと感じ合うことができた。それは、私にとっても素敵な体験だった。
 そのことを、参観のお礼と共に、次の学年通信に書きたいと思っている。
「yoshikoの部屋」Topへ  「yoshikoの仕事部屋」へ
inserted by FC2 system