エイズと生きる (6年:道徳)

(関連:体育科「病原体がもとになって起こる病気」)


ねらい
 南アフリカの少年ンコシ君や、M君・川田龍平さん・ジョナサン君などの事例を通して,差別や偏見を乗り超えて共に生きることの大切さに気付くと共に,自分が今後どのように生活すればよいか考えることができるようにする。

準備物
ンコシ君と養母の写真,世界地図,感染者・患者数の推移グラフ(国内・世界),川田龍平さんの写真,M君の手紙,自己評価カード
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ジム・ウーテン「ぼくもあなたと同じ人間です」 
ジョナサン・スウェイン「ぼくはジョナサン・・・・エイズなの」「ジョナサンのニッポン日記」
広河隆一 川田悦子「龍平の未来」
菊池治「エイズを生きる子どもたち」

授業の流れ
 
 ンコシ君が国際エイズ会議で訴えた話の内容を知り、ンコシ君の気持ちを話し合った。

・南アのエイズ事情
・ンコシ君への差別
・ンコシ君の気持ち
 サハラ以南アフリカに感染者がとても多いことや、母子感染によって子ども達もエイズに苦しんでいること(前時の学習)を想起させた。

 学校や難民キャンプでンコシ君が差別をどのように感じたか、また、どんな気持ちで国際エイズ会議でスピーチしたか、ンコシ君の気持ちになって考え、話し合わせた。
2 
 他の感染者の資料を読み、感じたことを話し合った。

・M君の訴え
・川田龍平さん母子の活動
・ジャナサン君の訴え
・感染者の気持ち
 勇気をもって病気に立ち向かう人々の存在を知ると共に、自分達には何ができるか考えさせた。

 予防できる病気であるにもかかわらず、日本では知識のない若者の間にも増えていることを知らせた。

 診療拒否や入居拒否・解雇・社会的孤立など,日本にも差別が存在したことや, 無知や誤解が取り返しのつかない問題につながることもあることを伝えた。
3   自分達の身近にも、無知や誤解がいじめにつながるような差別や偏見はないか考えた。
・友人関係について
 身近なところに無知や誤解による同じような差別はないか考えさせた。
4   本時の学習を振り返った。
・本時の感想
・気をつけたいこと
・疑問
 本時の感想や気をつけたいことを自己評価カードに記入させた。

<子ども達の反応>

世界では、生まれながらにHIVに感染している子どもが約40万人もいることや、
半数の約20万人が2歳以下で死亡していること、貧しい国では治療を受けている人が25%に満たないこと、
サハラ以南の国で爆発的な流行を見せていることなどを、まず復習した。

そしてンコシ君の写真を見せながら資料の読み聞かせ。
読み聞かせではいつもそうだが、みんな真剣な目で聞いていた。
◆活動1◆ ンコシ君の気持ち
 「出て行け」と看板が立てられて傷付いているけど、諦めずに国際エイズ会議でスピーチしてすごい。
 プラカードにあんなひどいことを書くなんて、全然何も知らないのにおかしいと思う。だけどンコシ君は理解してもらうために立ち向かったのがすごいと思った。
 お母さんは解雇され、入居も入学も拒否され、しかも私たちの年で死ぬのはいやだと思った。HIVは人の心を傷付ける病気だ。
 病気を理由に入学拒否するのはかわいそうだ。
 HIVはそう簡単には人にうつらないのに、入学拒否されてかわいそうだ。
 HIVだけでンコシ君のお母さんの仕事を辞めらせるなんてひどい。HIVだけで差別を受けるなんて。
 入学拒否や「出て行け」とか言われたのにくじけずに、みんなに伝えることができてよかった。少しずつだけど感染者が減っているのでよかったと思う。ンコシ君の願いはみんなに伝わったと思う。みんな知ることができたと思う。
 ンコシ君はあんなに学校に行きたがっていたのにエイズのせいで「ンコシ君来るな」という看板を立てられたりされて悔しかったと思う。

HIVのことをあまり知らない人達のせいで差別を受けたのに、ンコシ君はあきらめずに立ち向かったのですごいと思った。それと、ンコシ君のおかげで少しずつエイズやHIVが減ってきたので、もっとすごいと思った。

 やっぱり差別はいけないと思った。いけない理由は、ンコシ君が言ったように同じ人間だから差別してはいけない。

 ただエイズという病気になったからって、みんなから差別されてかわいそうだ。勉強や普通のことをみんなと一緒にやりたいのに、うつらないのに、変な看板みたいなのを作っていやな感じだ。同じ人間なのにひどい。分らなかったのはしょうがないけど、やったことは確かだからちゃんと謝ってほしい。ンコシ君のおかげでたくさんのエイズの患者さんが助かったし、エイズということがたくさんの人に知ってもらったので、ンコシ君は死んでしまったけど、よかったと思った。
 ンコシ君の言う通り、同じ人間だから恐がることはないと思う。この世界に、HIVについて無知の人をなくしたい。自分の考えを主張できることがすごいと思った。
 ンコシ君と義理のお母さんは、とても頑張って学校に行けるようになってとてもよかった。
 エイズを知らない人に全力でスピーチしたンコシ君の努力がすごい。
 エイズについて知識を持つことが大事だなと思った。HIVに感染している人はたくさんいるのに、なんでみんなよく知らないのか不思議だ。お母さんも自分の子供じゃないのにあきらめずにがんばってすごい。
 12歳で亡くなるなんてとてもかわいそうだ。

 親子でひどい差別を受けたことや、実のお母さんを亡くしたことなどについて、子ども達はよく共感していた。
 また、ンコシ君が世界の舞台でスピーチしたのは日本でいうと5年生の時で、亡くなったのがみんなと同じ6年生の時だったということにも子ども達は、いささかショックを感じていたようだった。
 この時点で、ンコシ君だけでなく、彼を支えた義理のお母さんにも目を向けることができた子どもがいたので感心した。
◆活動1◆ ンコシ君はなぜ国際エイズ会議で訴えたか
 自分や同じ立場の人を助けたかった。
 エイズはそんなに簡単にはうつらないと言いたかった。
 世界にはまだHIVに感染している人がいて、その人達が勘違いで変な目で見られないように。
 自分と同じ苦しみを他の人に与えたくない。
 エイズのことをみんなに知ってもらいたかった。
 大人に知ってもらいたかった。
 何も分かってない人達に理解してもらうため。
 みんなと同じに勉強したかったから。

  「みんなと同じに勉強したかった。」それはンコシ君の切実な願いだった。また病気の苦しみだけでなく、人々の無知によってどれだけ苦しんだか、ンコシ君のスピーチによって我々は知ることができた。更に、自分以外の感染者のためにンコシ君は訴えた。ンコシ君が世界に与えた影響は計り知れない。そのことがよく掴めたと思う。
 ここでは、義理のお母さん以外の支える人の存在や、名もなくひっそり死んでいく子ども達についても、説明した。
「活動1」で時間を使ったので、「活動2」の日本の感染者については、資料プリントを配り、さっと紹介するだけで終わった。
「朝の会」や授業の合間などをみて、読み聞かせを続けて補っていきたいと思う。
◆活動3◆身近にいじめにつながる差別や偏見はないか
ちょっとあった
たぶんあった。
たぶんある。
知らない間に人を傷付けていたかもしれない。
弟をいじめた。
知らない間にちょっとはあったと思う。

 言葉少なだったが、知らない間にも差別は存在してしまうことに気付くことができたのはよかったと思う。
◆活動4◆本時の感想
 エイズの恐さを知った。
 ぼくは知らない間に人をいじめていたかもしれない。
 いろんな病気の人達のことも考えながら生きていかないといけないと思った。
 これからはいじめにつながるような差別は絶対になくしたい。
 差別はいけないと思った。私も○○君を差別したことがある。差別禁止×だめ×
 普段していることで、自分の知らないうちに差別をしているかもしれないと思った。
 HIVを持っている人をいじめたり差別したりしてはいけない。
 今日の学習で、たくさんのエイズで苦しんだ人々の苦しみが分かった。
 ンコシ君はあきらめず頑張った。
 差別って最悪だと思った。こんな世の中にしたくない。
 エイズはそんなに簡単にはうつらないと知った。
 これからはエイズだけでなく障害のある人などを変な目で見ない。みんな同じだということが分かった。
 差別の怖さが分かった。
 ンコシ君はすごく勇気があると思う。
 エイズになったからと言って出ていかされたりしてはいけない。
 差別やいじめをしてはいけないと思った。
 私はもう無知の人達とは違うので差別なんかしたくないと思った。
 自分もなって、こういうふうにいじめにあったらいやなのと同じで、いじめは絶対にしてはいけないことに気付けてよかった。
 ンコシ君のお母さんは実の子供でないのに一生懸命ンコシ君を支え、一緒に活動をしてきてすごい。
 エイズという病気がきっかけでいじめにつながるというのはとてもかわいそうだ。
 人に悪口を言ってはいけないと分かった。
 
 「私はもう無知の人達とは違うので差別なんかしたくない」「こんな世の中にしたくない」・・なんて力強い言葉だろう。この授業をした甲斐があったと感じた。この日の「帰りの会」では、ソクラテスの「無知の知」について、ちょっと話した。無知だと知ることこそ、よりよく生きる礎なのだと、しみじみ思う。
◇ どんなふうに暮らしていけばいいだろう ◇
 

 ぼくは普通がいい。

 エイズのことをよく知らなかったら、私も差別していたかもしれない。私達にしかできないことはたくさんあるけど、いいことは1つある。それは友達みたいに接してHIVになっていないと思わせることだ。それだけでいろいろな人が助かると気付いた。

 命を大切にし、何事もよく知ろうという気持ちを持つ。

 病気の子を差別してはいけない。

 どんな病気の人でも差別しない。自分がされたら絶対にいやだ。

 もし会ったら、絶対に差別しないようにする。

 私もどこかで差別してたと思う。だから今度から反省して頑張りたい。

 差別などせず、みんなと仲良く暮らしたい。

 身近で小さな差別から順々になくしていけばいい。

 何があっても人を差別するのは最悪だと思う。どんなことがあっても独りぼっちにはさせたくない。

 障害者に会っても変な目で見ず暮らしていきたい。

 みんな同じ人間だから差別しない。

 子ども達は純真だ。共感する心を充分に持ち合わせている。適時性にも配慮しながら心に響く情報を与え、その心を掘り起こしていくことが、心豊かな毎日を送る支えになるのだと改めて思った。

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