さまざまな性 1 (3年:総合的な学習)
はじめに
 世の中には,女性の身体で生まれたけれど性自認が男性であるという人や,男性の身体で生まれたけれど性自認が女性であるという人がいる。性同一性障害(Gender Identity Disorder)の人々だ。それはその人の趣味や嗜好などではなく,生まれた時から揺るぐことのない特徴で,しばしば周囲の人を戸惑わせ,そこから起こる様々な現象によって本人を苦しめている。当事者にとっては生命に関わる大きな問題であり,子ども時代から想像もできないような苦しみの中で辛い毎日を送っている場合がほとんどだ。
 
 見た目の違いによって幼い頃からずっといじめられ続けてきた人,性を確認されてしまうのが嫌で病気になっても病院に行けない人,性別表記のある住民票を見せなければならないために正社員になるのを諦めた人,家族や近所の目を気にして引きこもりになってしまった人,身体の違和感に苦しみ抜いて自殺してしまった人…。我々の社会は,あらゆる苦しみを,それと気付かず彼ら・彼女らに与えてきた。そもそも男性とは,女性とは,何なのか。性は何によって決定付けられるのだろうか。
 

 性同一性障害の人々の中には,社会が認知することで随分救われるという人々も少なくない。感受性が強く,固定的な価値観をまだ持たない柔軟な子どもたちだからこそ,世の中には多様な性の人々がいて,その性を必死に生きようとする人々がいるということをしっかり学んでもらいたい。そして、人間への理解を深め、心豊かに生きていってももらいたい。そんな思いで今回の授業を仕組んでみた。
ねらい
 人間の性は,男か女かという単純な二分論では割り切れない多様性を持っていることや,ひとたび確立した性自認は、環境や教育で変わることがないことを知る。
授業の流れ
(1)  魚類や両生類で、性的両能性を持つ生き物を紹介した。
○ 釣りの好きな子どもが数人、ハナダイやクマノミなどの両能性を知っていたので、意外だった。

(2)  人間にも性的両能期があり、決められた時期で性が分化していくことや、その後はどんなに努力しても変えられないことなどを、胎児の絵を示しながら説明した。
○ 胎児の発育については2年生で既に学んでいたので、スムーズに理解できた。
○ 7週目頃に身体の性、20週目頃に心の性が決まることや、それ以前は人間も、両能性を持ち合わせていたことなどを話した。
○ 人間も、両能性を持ち合わせている時期があることに、とても驚くのではないかと予想していたが、案外スムーズに受け止めていた。

(3)  性分化の過程にあって、たまたま何かのきっかけで、まれに身体の性と心の性が一致しなくなってしまう場合もあることを伝えた。
○ 子ども達は皆、納得した表情だった。

(4)  そうして生まれた人々に、つらく当たる人もいることなど、実例を話した。そして次時では、性同一性障害のTさんと勉強することを伝えた。
(5)  話の内容を振り返り,ワークシートに感想を書かせた。
(6)  書いたことを発表し合わせた。
子どもの反応1 <分かったこと〜ワークシートより>
・お腹の中にいる時は、はじめはみんな女だったんだな。
・オスにもメスにもなれる魚がいることが分かった。
・男がXYで女がXXだけど、生まれた後はどんなに頑張っても
 変えられないんだな。
・女性になりたがっている男性や女性になりたがっている男性が、
 世界中にいることを知った。
子どもの反応2 <感想〜話合いより>
・心と体の性の違う人がいても、仕方ないし、異常とか思ってはいけないと思う。
・さまざまな性のことが分かった。 Tさんに早く会いたい。
・(Tさんは)体が男なのに女として暮らすのは大変だと思うけど、頑張ってほしい。
・女の気持ちを持つのは自由だし仕方ないと思う。
・人が指示しなくても、私も自分らしく生きていたい。
・人に無理なことを押しつけたらいけない。
・自分も友達も、神様がくれたたったひとつの命だから、大切にしないといけない。
◆考察◆
* 性は男と女の2つだけではなくマイノリティの性もあるということや、それは個々人が固有に持っている人権のひとつだということが、よく伝わったと思う。

* 終末では、人の性もさまざまであるということや、「らしさ」は人から押しつけられるのではなく自分で決めるものだということ、人に無理なことを押しつけてはいけないことなど、話合いの中で子ども達から出た意見を再度確認した。

* 子ども達は皆、当事者の気持ちに寄り添って物事を考えようとしていた。(さすがだ!) とても嬉しく思った。

* 次回の出会い(MTFのTさんをゲストティーチャーにお迎えし、お話を聞く予定)によって、ステレオタイプな性の二分法を、人に押しつけることの罪深さを、より深刻に感じることができるのではないかと思う。そして、どんな性を持っていても、自分の人権も、他者の人権も、等しく尊重するという当たり前で大切なことを、深く理解してくれることを期待している。

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