「わたしのからだ」(第1学年:学活)

一 はじめに

 子供たちが一人の人間として、生涯にわたり自立してその性を生きるためには、まず、自分が自分の心とからだのありようを決定づける主人公であるという確かな認識を育てることが大切である。
 性器についても幼いうちから正しく学び、親しむ必要がある。性器は、他の器官同様大切なからだの一部であるというだけでなく、個人の人格や生き方をも方向付ける要素を持つプライバシーの原点でもあるからである。
 しかし、それにもかかわらず、性器は子供たちにとって(特に女の子では)、からだの中で最も分かりにくく親しみにくい存在となっているようである。その上、現代日本の情報化社会の中では、娯楽や快楽の対象としてモノ化され、人権感覚を失った俗悪な性産業の中心ともなっている現状である。
 子供たちが性に関わる感性と能力を確かに伸ばし、自らの成長を楽しみにできる肯定的なからだ観や自分観を持つために、我々は、性や性器を人格や人権の一部として位置付けた性教育を着実に積み重ねていく必要があるのではないだろうか。

二 実践事例 1

     
一学期「からだをきれいに」

(1)子供の実態

 事前に行った個別の聞き取り調査によると、自分の性器について、「恥ずかしい」「汚い」「気持ち悪い」などというマイナスイメージを持っている子供が76%と、意外に多いことが分かった。
 また、入浴についての調査では、汚れた部分や性器、肛門を先に洗ってから入浴するという子供は41%で、25%の子供は掛かり湯もせず浴槽につかると回答した。
 排便や排尿後の処理の仕方については、女子の中にも、誤った方法を身に付けている子が約3割いた。

(2)ねらい

自分のからだを自分自身のものとして大切にし、進んで清潔に保とうとする態度を養う。

(3)準備

 紙芝居、学習カード、探検ボード、実践カード付き修了記念メダル、足拭き雑巾、ハンカチ、おまる、人形、トイレットペーパー、浴槽、洗面器、タオル

(4)学習の経過

 子供たちが友達と関わりながら、問題意識を持って主体的に学習できるよう、本活動は各コーナー(トイレ体験コーナー・お風呂体験コーナー・手の洗い方コーナー・足の洗い方コーナー)に分かれての体験活動を中心に設定した。入学して間もなくの実践であったが、皆好奇心いっぱいの表情で、自分の生活体験も振り返りながら、楽しそうに活動した。後の調査でも、学習内容をよく覚えており、生活に役立てていた。

三 実践事例 2

   
二学期「せいきってなあに」

(1)子供の実態

 夏休みに行った調査によると、全員の子供が性器の形態により自分の性を認識していることが分かったが、性器を排泄器官としてしか認識していないことが分かった。また、性器を「汚い」所とマイナスイメージでとらえている子供がまだ1割いることや、男には性器があるが女にはないと考えていたり、全く無頓着に生活している子供が多いという実態も明らかになった。

(2)ねらい

パズルやクイズ、ぬり絵などの活動を楽しみながら、体の一部としての性器に親しみを持ち、自分や友達の性器を大切にしようとする態度を育てる。

(3)準備

0HP、スクリーン、探検ボード
 ▼探検コーナー…男女の性器のパネル・外性器の模型、人体図、説明カード、テレビ、VTR、関連書籍
 ▼練習・まとめコーナー…パズル、各種プリント、色鉛筆
 ▼チェックコーナー…各種解答、ヒントカード
(4)学習の経過
前回に引き続き、ここでも課題追究型のコーナー学習の形態で、TTで指導した。本時の指導にあたっては、人間が性という大切な人権を持ち、豊かにいきていく存在であることを念頭に、自分自身や友達へのいたわりの心情を温かく育んでいけるよう、言葉がけに留意した。

四 終わりに

からだと命の主体者意識を育てる


 1学期当初は、性器を汚い所と思っていた子供がクラス全体の8割近くにのぼったが、「からだをきれいに」の学習後には、約1割に減少し、更に「せいきってなあに?」の学習後には僅かに1名の子供だけが性器を「汚い所」ととらえ、残りの子供たちは「汚れやすいが清潔にしたい。」「自分だけの大切な所」等の回答を寄せるようになった。これら2つの授業によって、多くの子供が性器に対する肯定的な感覚を育むことができたことをうれしく思う。

肯定的なからだ観・自分観を育てる


幼い子供であっても幼いなりに、自分に自信が持てなかったり、周囲からの否定的な言葉掛けによって心に傷を負っている子供は案外多い。何か事に当たろうという時に「どうせ自分はだめだから。」と試す前から諦めてしまっていたり、「もういい。」と自暴自棄になり自己主張しなかったりする子供たちも少なくない。そうかと思えば、他人を思いやる心も持てず、他人を否定することで自分の存在に安心感を得ようとする子供たちも見受けられる。
 いじめや不登校など、問題行動や不適応を起こしている子供たちだけでなく、その裾野で耐えている自分自身に自信を持てない子供たち、豊かに生きる希望を持たない子供たちに、よりよく生きるために努力する力を与える教育が、性教育ではないかと思っている。
 一人一人がかけがえのない存在であり、この世に生まれてきたことには深い意味があるということを素直に感じ取れる授業作りを、今後もめざしてゆきたい。
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