この命のかがやきを(6年:道徳)
 資料は、3度目の心臓手術を前に、母親に向けて書いた柳橋佐江子さん(14歳)の手紙である。
手術の3日前に書き、前日母親に手渡した。
翌日、15時間に及ぶ大手術を受けたが、亡くなった。

手紙には14年間の思い出と共に、母親への感謝の気持ちと、手術後の人生への期待が綴られている。
 
手紙の主な内容
・『14年間私を育ててくれてありがとう』心臓病を持って生まれた私を14年間必死になって育ててくれてありがとう。
・プールに入れないと、くやしがって泣いた私をひざの上に乗せて『世の中には、もっともっと大変な人がいるんだよ』と、何度も何度も言い聞かせてくれた。
・小学校の遠足では『お母さんはサエコの足だよ』って言いながら私をおぶって一緒について来てくれた。私はとても嫌だった。
・ずっと自転車で学校に送り迎えをしてもらった。
・大きくなって、自転車の後ろに乗れなくなってからは車の免許まで取った。
・昨年の五月の宿泊学習のときは担任の先生や校長先生に一生懸命頭を下げて『どうか一泊だけでも行かせてやって下さい』と頼んでまわってくれた。
・一日も早く退院してまた一緒にコーヒーを飲みたい。
・辛くて涙が止まらないとき、黙って私の手を握ってくれるお母さんの手は、とってもあったかい。辛い事が雪のようにどんどん溶けていくみたい。
・お母さんのあったかい手が大好き
・お母さんの口癖。『いい夢見なさい』『別に好きで悪い夢みてる訳じゃないのに…いい夢なんて見ようと思って見られるものじゃない。変なの』ってずっと思っていた。
・将来子供が生まれたら夜『いい夢見なさい』と言ってあげたい。
・毎日私のかばんを持って教室まで送ってくれた。
・朝全然知らない生徒にも『おはようございます。』と大きい声で挨拶。『そんな事したら余計目立って恥ずかしいじゃない』ってすごぉくすごぉく嫌だった。
・でもお母さんのそんな姿を見て育ったから、私はいつでも堂々と胸を張って歩けるようになった。
・今の私はとても幸せ。
・みんなお母さんのおかげ。
・『お母さんなんか私の気持ち全然わかってない』そう思った事が何度もあった。
・でも本当はお母さんは私の気持ちわかりすぎる位わかっている。
・私が辛くて泣きたくなるときお母さんもやっぱり涙を流すまいと頑張っている。
・小学校入学以来初めて親の付き添い無しで行けた中学一年の遠足ではお母さんもすごく喜んで嬉し涙をボロボロ流していた。
・病院で一人淋しくなると『お母さんも淋しいんだ。頑張れ』と自分に言い聞かせている。
・私が辛いときはお母さんも同じように辛い。だから私は『手術頑張ってくるね』じゃなくて『手術頑張ろうね』と言いたい。
・この手術がすめば私もみんなと同じ健康な身体になれる。私もしっかり頑張るからお母さんも頑張ってほしい。
・365×14回分の『ありがとう』を言いたい。
・これからもうしばらくはお世話になるだろうけどよろしく。
・お母さんがおばあちゃんになったらたっぷり面倒みるからね。手術頑張ろうね


授業の流れ
 
ー 予習 ー

 手紙を読み、心に残ったところ、手紙を書いた佐江子さんの気持ち、14年間に渡る母親の気持ちを考えて来るよう伝えておいた。

 資料は手紙のみであり、佐江子さんがその後どうなったのか書かれていない。子どもたちは佐江子さんのその後を大変気にしていたが、手紙を書いた時点での佐江子さんの気持ちにしっかりと共感できるよう、ここでは敢えて知らせなかった。


ー 本時 ー

1
 3人グループになり、手紙を読んだ感想を交流し合わせた。
2
 グループで話し合ったことを、発表し合わせた。
 ・ 心に残ったところ
 ・ 佐江子さんの気持ち
 ・ お母さんの気持ち
3  柳橋佐江子さんが、手術の後亡くなったことを伝えた。そして、手術直前に日記帳に詩も遺していたことを伝え、その詩を提示し朗読した。
4  佐江子さんと同じ心臓病のために、一昨年亡くなった井口羽純さんの遺言を紹介。「この命のかがやきを」という主題名について考えさせた。



<子どもの反応>
心に残ったところ
 「私達は親子で一心同体だよ。」「手術頑張ろうね」
 本人が手術しようと決意したこと。失敗したら死んでしまうかもしれないのに、お母さんのために手術をしようと決意したから。
 「14年間、笑顔と根性で私を育ててくれて本当にありがとう。」
 「心臓病を持って生まれた私を14年間必死になって育ててくれてありがとう。」
 「だから今の私はとっても幸せです。〜の友達がいます。堂々と、しっかり胸を張って、明るく生きることで、私はこんなに幸せになれました。みんなみんなお母さんのお陰です。ありがとう。」は、心からの感謝の言葉だと思う。
 「お母さんなんか私の気持ち全然分かってない。そう思ったことが何度あっただろう。」
 「お母さんは佐江子の足だよ。」は、お母さんは佐江子の体の一部だから、佐江子がつらい時はお母さんもつらいという意味だと思う。
 何度も何度も言い聞かせてくれたのは、大切に思う気持ちが伝わってくる。
 「お母さんは佐江子の足だよ。」は、とても嬉しくて安心できる言葉。
 担任の先生や校長先生に頭を下げたところがすごい。子ども思いの母親だ。母親が必死に育てたから、その恩返しとして手紙を書いた。「お母さんは佐江子の足だよ。」というところから、お母さんはいつも佐江子の味方だよということが分かった。
 一生懸命頭を下げたところは、子どものために必死だった様子が分かる。
 「365×14回分のありがとうを言いたい」それだけお世話になったから。本当は嫌だったけど、でも嬉しかったことを伝えたかった。
 心臓病なのに頑張って生きようとする気持ちに感動した。
 必死に育てたからここまで生きれたと思う。
 「お母さんがおばあちゃんになったらたっぷり面倒見るからね。」は、今までたっぷり面倒を見てもらっているから言いたかったのだと思う。
 佐江子を励まし応援し「お母さんは佐江子の足だよ。」「世の中にはもっと大変な人がいるんだよ」「どうか一泊だけでも行かせてやって下さい」と佐江子のために頑張った所。
 子どものために不得意なことでもしてくれる。車の免許まで取ったところ。
 
佐江子さんの気持ち
 自分も辛いけど、お母さんはもっっと辛くなるんだということが分かっている。
 手術でもしかして死ぬかもと思ったから手紙を書いた。自分の気持ちを伝えたかった。言葉では言い切れないほどいっぱいの気持ちがあった。伝えたいことを残しておきたかった。
 14年間、大変なお世話をしてくれたから、御礼を言いたかった。ありがとうという気持ちでいっぱい。
 14年間の感謝の気持ちと手術頑張ろうねを伝えるために書いた。入院していて口で言うことができなかった。
 自分のためにしてくれたこと全部1つ1つに「ありがとう」を言いたかった。その時言えなかったから。
 死んでしまう可能性があったから書いた。死ぬ前にありがとうを伝えたかった。
 3日後の手術で自分が命を落とすかもしれないから。14年間分のありがとうを言いづらかったから手紙にした。
 お母さんに心配をかけないように。
 苦しいこともたくさんあったけど、嬉しいことがたくさんあった。恩返ししたいと思っている。
 必死で育ててくれたから恩返しをしたんだと思う。
 必死に育ててくれたことに対する恩返しや感謝の気持ちを伝えたかった。
 素直に言えなかったことを手紙に書いた。ありがとうという気持ちでいっぱい。
 もう少しお母さんや友達と一緒にいたい。
 大人になったら、お母さんの面倒を見てあげたい。
 頑張って生きようと思っている。
 私は多分死ぬから最後にこの手紙だけは残すんだと思っていたと思う。
 お母さんが誰よりも好き。お母さんは誰よりも私のことを分かってくれている。
 お母さんの子どもでよかったと思っている。
 不安だけど、お母さんのために手術を頑張ろう。
 ここまで生きられたのもお母さんのお陰。
 温かい母の手が好き。
 お母さんがおばあちゃんになるとたっぷり面倒を見ることを言いたかった。
お母さんの気持ち
 自分にできることをたくさんやろうと思っていたと思う。
 佐江子の世話をして、辛いこともあったけど、楽しいこともあった。
 佐江子にはできるだけいい人生を送ってほしい。いろんな経験をして友達もたくさん作って立派な人に育ってほしい。病気のことなんて忘れてほしい。
 佐江子を悲しませたくなかったから、何としてでも頑張って励ました。
 佐江子が生まれて14年間、佐江子に「生きてて損した」なんて思わせないように、いろいろな経験をさせてよかった。
 生きててもらいたい。
 もう少し生きる楽しみを感じさせてあげたかった。
 自分がどんなに苦労しても、佐江子に生きてもらいたい。
 誰よりも佐江子が好き
 佐江子に全てを捧げようとしていた。
 佐江子の気持ちを大切に思っている。
 お母さんは誰よりも佐江子を分かっている。
 もっと長く生きてほしい。
 佐江子を1度も悪く思ったことはないと思う。
 14年間育てられて本当によかったと思う。もっと頑張ればみんなと同じ健康な体になってみんなと一緒に登校できたらいいな。早く治ってほしいな。でも、死も覚悟している。
 佐江子、今までありがとう。
 私の子どもは自分で世話する。この子が寂しくならないようにずーっと側にいてあげる。
 14年間、やっと育ててきた子どもなのに、手術が失敗すると会えなくなってしまうので、必死に心の中で頑張れと言っていた。
 佐江子は心臓が悪いけど、それは誰も悪くない。ただ一生懸命に頑張っていけば必ずみんなと一緒の体になれる。手術を頑張って、どこか色々なところに行って何かしようね。

第二資料の配付
 佐江子さんの手術の結果を知らせ、手術直前に日記に書いた詩を紹介した。また、同じく心臓手術の後亡くなった、井口羽純さんの遺言も紹介した。

 「願っても願っても、かなえられない命もあるんだね。」・・・みんな、しーんと聞いていた。悲しそうな顔をしている子が幾人もいた。

終末
 
 終末は、題名について考えてみようと投げかけた。資料名は「この命のかがやきを」である。残り時間がなくなってきていたため2〜3名の子どもを指名して、意見を聞いただけで終わったが、ここは一人ひとりにじっくり書かせてもよかったと反省している。

 その後、数人の子どもに本時の感想を聞いた。
<子どもの感想>      
 いろんな人に支えられているんだと思った。
 生きている人は必ず家族や友達に支えられている。
 生きるということは幸せなんだということが分かった。
 自分の命はもちろん大切。他人の命も同じ。
 命を大切にしたい。
 私はこの学習をしていくうちに佐江子さんはとても立派な人だったんだなあと思った。たくさんの人に支えられ15時間という大手術の前にあんなに心強いのはすごい。私も佐江子さんのようになりたい。そしてみんなの命を大切にして、佐江子さんのように心臓病や病気の人を助けてあげたい。
  
 日頃乱暴な言動の多いN君にも、「今日の勉強、どうだった?」と聞いてみた。彼はぽつんと「命って大事なんだなと思いました。」と言った。言葉そのものは月並みかもしれないけれど、彼がそう発言したことが、嬉しかった。
参観者の感想
 
 事前に資料を読み取らせ「一番心に残ったところとその理由」等をノートに書かせることで、読解はしっかりできていた。
 佐江子さんの気持ちを考えさせるのに小集団学習を取り入れ、十数分間の話し合い時間を取ったことは、以後の全体学習の深まりに有効であった。グループ編成も教師の意図を加えた異質集団で、話し合いの力に差異が生じないようにしてあった。
 児童一人ひとりがノートを活用して学習を主体的に進めていた。佐江子の気持ち・母の気持ちとテーマを決めての話し合いとノートの整理ができていた。
 発表の話形が、よく訓練してあった。
 教材分析・教材解釈が深く、副読本以外の資料を提供したり、主人公の結末についての情報を伝えたりすることで、資料の価値が高まった。

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