原 民喜 原爆小景より(5年:国語科)

コレガ人間ナノデス
コレガ人間ナノデス
原子爆弾ニ依ル変化ヲゴラン下サイ
肉体ガ恐ロシク膨脹シ
男モ女モスベテ一ツノ型ニカヘル
オオ ソノ真黒焦ゲノ滅茶苦茶ノ
爛レタ顔ノムクンダ唇カラ洩レテ来ル声ハ
「助ケテ下サイ」
ト カ細イ 静カナ言葉
コレガ コレガ人間ナノデス
人間ノ顔ナノデス

1 原 民喜の生涯や著書を紹介した。
 詩人 原民喜は、被曝の前年、妻と死別 しており、死後1年だけ生きていようと決意していたのだそうだ。しかし、皮肉にも妻の死の1年後、40歳の時に疎開先の幟町の生家で被爆した。その後は生き残った者の使命として被爆体験・惨状を伝える作品を書き続けたが、朝鮮戦争やトルーマン大統領の声明(「原爆使用もありうる」)等に失望し、1951年3月13日、東京中央線の線路に身を横たえ自殺した。46歳だった。

 「夏の花」「廃墟から」等、多数の詩作・小説がある。

2 原 民喜が残した詩を2編紹介した。
 
水ヲ下サイ
水ヲ下サイ
アア 水ヲ下サイ
ノマシテ下サイ
死ンダハウガ マシデ
死ンダハウガ
アア
タスケテ タスケテ
水ヲ
水ヲ
ドウカ
ドナタカ
 オーオーオーオー
 オーオーオーオー
天ガ裂ケ
街ガ無クナリ
川ガ
ナガレテヰル
 オーオーオーオー
 オーオーオーオー

夜ガクル
夜ガクル
ヒカラビタ眼ニ
タダレタ唇ニ
ヒリヒリ灼ケテ
フラフラノ
コノ メチヤクチヤノ
顔ノ
ニンゲンノウメキ
ニンゲンノ


火ノナカデ 電柱ハ
火ノナカデ
電柱ハ一ツノ蕊ノヤウニ
蝋燭ノヤウニ
モエアガリ トロケ
赤イ一ツノ蕊ノヤウニ
ムカフ岸ノ火ノナカデ
ケサカラ ツギツギニ
ニンゲンノ目ノナカヲオドロキガ
サケンデユク 火ノナカデ
電柱ハ一ツノ蕊ノヤウニ

 みんなとても真剣な態度で聞いていた。(「火ノナカデ 電柱ハ」は板書し、しばし鑑賞した。ろうそくも電柱も身近にあるものなので、想像しやすいようだった。)

3 「コレガ人間ナノデス」を読み合った。
 資料を配布し、読み合った。「膨張」「爛れ」「むくみ」等の言葉は説明した。

4 人間が、どんな姿で死んでいるのだろう。
 子どもたちは、これまで学んできた平和学習を想起して答えていた。国語科ゆえに、もっと言葉に着目し、忠実に読み取るよう働きかけるべきだったとは思うが、その惨状を心から悲惨と感じ、悼んでいる様子だったので、ここでは敢えて訂正したりせず、先に進んだ。

<子どもの反応>
・焼き付いて死ぬ。
・身体が焼き付き、誰が誰だか分からない。
・体中が焼けて、穴もあいて死んでいる。
・焼けてどろどろになって死んだ。
・肉体が膨張し、真っ黒こげでむちゃくちゃの爛れた顔をしたまま死んでいった。
・滅茶苦茶になって死んでいる。 
・全て引きはがされて、風船のようになって死んでいる。
・真っ黒になって死んでいった。
・肉体はぼろぼろ
・もだえ苦しんだ。
・水を下さいと言いながら。
・骨が見えて、皮もむけて死んでいる。
・人間ではないと思えるくらい焼けて死んでいて、心も身体も全てがなくなった。

5 人間が、どんな姿で生きているのだろう。
<子どもの反応>
・ただれた顔のむくんだ唇
・ぼろぼろな姿
・傷がいっぱいできている。
・大やけどしている。
・いろんな病気に罹っている。
・真っ黒焦げで皮がただれている。
・「助けてください」と言いながら。
・ぼろぼろで滅茶苦茶になった。
・肉や皮もぼろぼろで病気にもなっている。
・他の人と違う姿
・身体は例え治っても、心の傷は治らない。
・身体だけでなく家族や友達が死んで心まで傷付いて、悲しみながら生きている。
・がんばって生きている。
・苦しいけど生きている。

6 「コレガ コレガ」と繰り返されているわけは?
<子どもの反応>
・人間がしたことなのだと強調している。
・信じられないほどひどいから。
・人間がビックリするようなことをしたから。
・こんな姿なんですよと、すごく伝えたい。
・こんなにひどい兵器があることを伝えたいから。
・これが人間のやることなのかとすごく思っているから。 
・普通の姿じゃないから。
・世界の人に分かってほしいから。
・人間のやるべきでないことをやってしまって、ほんとの人間は悪いということが伝えたいから。
・人間が全て悪いんだ。
・実験をいろんなところで何回も繰り返しているから。

7 「人間ナノデス 人間ノ顔ナノデス」の意味は?
<子どもの反応>
・作者は、人間がしたことなのだと言いたいのだと思う。
・原爆などで目が見えなくなったり、大やけどをしたりしたから、説明している。 
・いつも見る人間の顔とは思えないから。
・「人間のやったことなのです」と言いたいから。
・こんな姿になってしまったという思い。
・もう二度としてはいけないから。
・人間が人間を攻撃した結果、人間ではないくらいの顔になって、人間は悪いことをしたという意味。
・人間の本当の姿
・人間が人間を殺し、人間が人間を苦しめた。でも、これが人間。(人間は)私達の思っているようなのではない。

8 漢字以外、なぜカタカナで書かれているのか?
<子どもの反応>
・強く表現したいから。 
・原子爆弾によってこんな姿になったということを、いろんな人に読んでもらいたいから。
・原爆みたいに残酷なように書いている。
・どれだけひどいか、カタカナの方が伝えやすかったのだと思う。
・読みにくくして注目してほしかった。
・人が弱っている気持ちを考えて
・読みにくくして目立たせる。
・悲しくてしょうがなかったから。
・カタカナだと読みづらいし、原爆のつらさをわかってほしいからカタカナで書いた。
・原子爆弾でのどが焼けて、普通にしゃべれないことを表現している。
・みんなに原爆の恐ろしさを知ってほしい。

 「ナノデス」や「ゴラン下サイ」は、知らない人に教えている言い方であることや、「オオ」という感嘆詞に込められた思いなどについて、少しだけ補足した。
 話者が、「静カナ」という言葉を選んだわけについては、投げかけのみ行った。

9 この詩の感想を発表しよう。
<子どもの感想>
・原さんは、とても優しい心を持っている。
・長くない詩だけど、意味がよく分かる。
・日本人もアメリカ人も同じ人間なのだから仲よくしてほしい。
・原爆に遭った人はいろんな人が死んでしまったけど、生き残った人は、本や詩などを書いてくれて、かわいそうだと思う。
・こんなに人が死んだから返してほしい。
・なんで自殺してしまったんだろう?
・人の心を考えたから自殺したと思う。
・なんで同じ人間なのにこんなことをするのか分からない。
・人間が人間を殺すのが戦争だけど、どうしてそんなことをするのだろう?また戦争があったら、何百万人・何千万人と死ぬので、戦争はいやだ。外国の人と仲よくしてほしい。
・ヒロシマの人の命が犠牲になったから、すごくかわいそうだと思う。
・何もかもがひどく、人間を人間と思えないほどめちゃくちゃだったんだと思える。
・とても無惨でとても悲しくて、人間のやることなのかと思った。
・先に仕掛ける方が悪い。
・食べ物ももらえないし、水も飲めなくて、生きれなかった人はすごくかわいそうだ。
・もうこんな人間になりたくない。こんな人間にならないようにみんなで戦争はなくしていきたい。もうこの詩のようになりたくない。
・強調法がたくさんだから、すごく残酷なことだったんだなと思う。
・同じ人間が人間を殺して懲らしめて、おもしろいのかなぁ。人の命を奪って楽しいのか不思議。
・先に日本が悪いことをしたんだから、やられても仕方ない。

10 話し合い
 最後に、気になる意見について少しだけ話し合った。「日本がいろんな国を侵略し、悪いことをたくさんしたので仕方ない。」という意見について、「やられたらやり返せってこと?」と別の子。「それは変じゃない?」「でも、初めにしなければこうならなかった。」「仲よくしたくても、してくれない相手だっている。」等々の意見が出た。残念ながら、例によって時間がなくなってきていて、十分な話し合いにはならなかったのだが、ここのところは次回是非補足したい。
 
 我々は、物事に至る歴史を冷静に振り返る必要がある一方で、残虐非道な行為を正当化することもできない。両者の意見は共に正しく、どちらか一方の意見だけが強調されることこそ避けなければならないと思う。それを今後子どもたちに伝えていきたい。
 

 また、私としては、人間への不信感を口にする子が多かったのが気になった。これまで大人を絶対的な存在として信じ、真面目に生きてきた子どもたちだからこその気付きなのかもしれない。被害の様子を知れば知るほど、性悪説こそ正しいという気がするのも無理はない。だけど、本来、不完全かもしれないけど人間はいいものだ〜本単元も、そう伝えられる締めくくりにしなければならないと思う。

 学びというものは、どれもそうなのだが、現代につながる、生活に生きる学びでなければならない。ただ歴史的事象のみを知るのでは学びの意味はない。そこのところを十分踏まえ、今後も平和学習を進めていきたい。








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