死を待つ動物たち(5年:道徳)

学校の前の運河で子どもたちが子猫を拾ってきた。
子猫はもう随分カラスにつつかれ、瀕死の状態だった。

教室の後ろに段ボール箱で即席の小屋をつくり、みんなで世話をした。
夜は交替でそれぞれの家に連れ帰った。

子どもたちは、家の人に聞いたり、近所の人に聞いたりして、必死に里親を探した。
里親募集のポスターを作り、校内放送も入れた。

2週間くらいしてやっと里親が決まり、子猫は引き取られていった。

もし里親が見つからなかったら・・・?
どこか遠くの山に捨てる?いいえ、そんなことはできない。同じ事の繰り返しだ。
もし里親が見つからなかったら、もう保健所しかないだろう・・・。
里親が見つかるまでの2週間、そんなことも話し合った。



1 動物が捨てられる理由を知った。
 まず、子猫はなぜ運河にいたのか想像し、発表した。
 「ペットが生んで、捨てられた」という意見が圧倒的多数だった。
 他にも、子どもたちは生活の中で、動物を捨てる人、虐待する人、様々な人に出くわし心を痛めていた。その体験をしばし語り合った。

 <子どもの反応>
  ・近所の人は、引っ越しして連れて行けないから、捨てていった。
  ・うるさい犬を飼い主が保健所に連れて行った。
  ・赤ちゃんが生まれて世話をしきれないから、段ボールに入れて捨てた。
  ・犬が多くて困るから、台風の中、外に出した。
  ・○○さんが、子猫を袋に入れてぶんぶん振り回していた。
  ・公園で猫が死んでいた。
  ・捨て犬を傘でつついたり、尻尾を踏んだり、ドングリを投げつけたりしていじめた。
  ・うちの犬はよく家出する。ある時、背中に悪口の手紙がつけてあった。
  ・自動販売機の下で猫が死んでいた。捨て猫だった。
  ・接着剤で子猫の目を張り付け、楽しんでいた人が逮捕されたのをテレビで見た。etc

 他にも、「家で飼うと臭いから」「病気になったから」「かわいくなくなった」など、人間の側の勝手な理由で犬や猫を捨てる人がいることや、年間約80万匹もの犬猫が、保健所で安楽死を強いられているという事実を知らせた。
 

2 山口県で殺処分や返還された犬猫の統計資料を読んだ。
 (山口県動物愛護センター調べ)
殺処分犬 返還犬 殺処分猫 返還猫
平成15年度 4472 222 5171 3
平成14年度 4600 112 5611 8
平成13年度 2056 91 4825 7
平成12年度 2612 99 4704 11

 殺される犬猫の数の多さに、子どもたちは驚いていた。
 山口県では廃止されたが、「実験払い下げ」(道徳:「傷つけられる動物たち」で既習)が未だに行われている県もあることを知らせた。
 また、日本のように殺処分というシステムはなく、ショップで生き物を売買せず、ブリーダーかシェルターからのみ手に入れることができる仕組みの国があることも、ここで触れた。

3 四国新聞掲載の資料「死を待つ犬たち」を読み合った。
 読むうちに涙をこぼす子、ため息を漏らす子がたくさんいた。教室は静まりかえり、悲しみで包まれた。しかし、本当に悲しいのは当事者である動物たち自身なのであり、人間として、我々はどう考え、何をしていかなければならないのか、一緒に考えようと投げかけた。 

4 濱井千恵 著、エフエー出版「ピーコの祈り」の読み聞かせをした。
 この本は、捨て犬ピーコの生と死を、ピーコの視点で語った物語だ。捨てられた時の様子や保健所で行われている安楽死という名の殺処分の様子などが、詳しく描かれている。
 ここでも子どもたちは息を飲み、微動だにせず、話に聞き入っていた。

5 話し合い(1)「捨て犬や捨て猫を見つけたら、どうすればいいのかな?」
<子どもの反応>
・飼う。
・飼えたら飼う。
・飼ってくれる人を探す。
・里親を探す。
・飼ってくれる人が見つかるまで探す。見つかるまでは自分の家で世話をする。
・ポスターを貼る。
・盲導犬や聴導犬、介助犬になれないか、問い合わせる。
・保健所は最後の手段だ。でも、山に捨てるのはもっと悪いかもしれない。

6 話し合い(2)「飼えなくなったら、どうすればいいのかな?」
<子どもの反応>
・ばあちゃんに預ける。
・引っ越ししても無理矢理連れて行く。
・いとこの家に預けたりする。
・誰かにあげたい。
・好きな人にあげる。
・飼えなくなる可能性があるのなら飼わない。
・飼ってくれる人を一生懸命探す。
・ペットはかわいいけど、そんなことになる前に、まず飼わない。

7 本時の感想
<子どもの感想>
・ショックだった。
・こんなことが本当に起きているなんて許せない。
・犬の気持ちになってほしい。
・命の大切さが分かった。
・ガスで殺してしまうなんて、とってもかわいそうだった。
・できればもっといろんなことを考えたい。 
・動物の命を、物みたいに捨てたくない。大事に育てたい。
・保健所がなくなって、保護する場所が増えればいいと思う。
・生まれたばかりの命を残酷な方法で殺して、最低だと思う。自分が嫌なことをやってはいけないと思う。命を簡単に奪うのはやめてほしい。
・人はなんで、1度はかわいくて大好きになって飼い始めた動物を捨てたりするのだろう?
・命を大切にしたい。動物を買ったら、絶対に最後まで世話をしたい。
・飼い主を探すことが大事だ。
・人間はワガママだ。飼うときは注意して飼いたい。絶対に捨てないようにする。
・1年間にこんなにたくさんの命が奪われていたなんて知らなかった。
・保健所で働いている人はどんな気持ちなのかが分かる気がした。
・犬や猫を殺す人間は最低だ。保健所に行く犬を救いたい。
・(保健所で)殺すのは仕方ないことだ。
・保健所に行って生き残る確率は2%なので、なるべく持って行きたくない。
・保健所での保管期限をもうちょっと伸ばすことができたら。
・飼いたいと思っていたけど、ほんとに大丈夫かしっかり考えたい。
・ぼくは絶対に捨てない。
・あんなふうに殺すなんて思ってもいなかったし、あんなに数多く殺して、引き取る飼い主も見つからないなんて信じられない。
・犬や猫、他の動物も人間と同じ命なのに、捨てるとか、保健所に連れて行ったりして、そこで殺されるのは分かっていても連れて行くなんて、すごくかわいそうだ。
 
 最後にもう1度、自分たちの体験を想起させた。
 あの時、里親が見つかって、本当によかった。ありがたい。里親に心から感謝したい。・・・みんな口々に言っていた。

 今年の読書感想文の課題図書「ぼくらはみんな生きている」には、人間が何気ない一時の楽しみで野生生物にエサをあげる、それがどんな不幸をもたらしているのか等についても記されていた。

 本当に我々人間は、もっと謙虚に真剣に、仲間の命のことを考えなければならないと心から思う。
 「これからは、もっともっと真剣に、生き物と自分たちとの関わり方を考えていきたいね。」・・・そう語って授業を終えた。








A Moveable Feast
inserted by FC2 system