エイズ学習の取組み


 
・実践1・〜高学年〜

1 主題名  エイズと共に(第6学年 学級活動)
2 ねらい  
 エイズをめぐる状況を調べる計画を立てることを通して、同じ人間として支え合って生きるために自分にできることは何か考えることができる。
3 授業の流れ
学習活動・内容 教師の支援
1 エイズに関わる様々な出来事や患者や感染者が置かれている状況についての学習を振り返る。
・母子感染 
・薬害エイズ
・メモリアルキルト,レッドリボン等,支援活動
・カミングアウトした人々
・よいエイズ,悪いエイズ
・医療の現場,各国の対策
・外国の感染者たち

○前時までのワークシートをもとに患者や感染者たちが社会の中でどのように過ごしているかを振り返り,エイズに対する社会の反応の多様性を確認する。
○エイズに対する差別の深刻さと共に,支援の輪の広がりや人権意識の高まりなどに触れ,共生社会への展望を持たせる。
患者や感染者と一緒に支え合って生きていくために,
自分にできることは何なのかを考えよう。
2 自分たちで追究したい話題やテーマは何か,グループごとに話し合う。
3 情報を収集・整理する計画を立てる。
○感染者が常に死と向き合い,不安と恐怖の中で生きている現実や家族の苦悩,また,友情や愛情が いかに大切で勇気づけられるものかなど,これまでの学習を振り返りながら自分たちのテーマを決定するようにさせる。
○感じたことや自分たちでできることなども分かりやすくまとめるよう投げかける。

4 前時までの子供の反応

(1)母子感染、子供の患者
 ・ 家族のない子も多く、愛情がもらえない。この子たちをどのようにしたら幸せにしてあげることができるのだろう。温かい家族がいれば、生きる希望ももっとあったと思う。
 ・ たとえ短い命でも、楽しい人生にしたいと思っていることだろう。
 ・ ルーマニアの「子供の家」は数が増え、靴やテレビを持って行ってあげる人も増えたようだ。だんだんと差別が無くなっていると思った。 
 ・ 産む前に検査をしたらいいと思った。

(2)薬害エイズ
 ・ 一人一人が自分のことと思って考えてほしい。 
 ・ 1日でも早く、完璧な薬をつくってほしい。でも、薬もできてほしいけど、理解者が一人でも増えるといいなと思った。
 ・ HIV感染者は告知されただけでもショックが大きいのに薬害とは許せない。

(3)カミングアウトした人々
 ・ たぶん、カミングアウトした人たちは、他のHIV感染者の人たちを「励まし勇気づけよう」という気持ちが強かったからだと思う。
 ・ 支援してくれる人やボランティアの人もいるし、私も応援しようと思う。カミングアウトしてくれたからよかったと思う。
 ・ 今まで通りに接してほしいということを強く訴えたかったのだと思う。差別さえなければ、カミングアウトする人はもっと増えると思う。

(4)よいエイズ・悪いエイズ
 ・ 今までホモと聞いたら変に思ったりしてたけど本当に2人は愛し合っていて協力して仲良く暮らして、うらやましい家庭だなと思うほどだった。性交でかかった人を差別するのはおかしいと思った。
 ・ 性交でうつるのは自業自得と思っていたけど、ビデオを見て考えが変わった。性交でうつっても、やっぱりかわいそうだ。
 ・ 私はいつエイズにかかるか分からないけど、生き抜いていくことが大切と思った。
・ どんなかかり方でも、社会に向けて言いたいことはたくさんあるはず。人の役にも立ちたいし、ふつうに生きたい。一番大事なのは、支援すること、愛情を持つことと思う。
 ・ 明るく生活する人が増えるとうれしい。
 ・ 性交でうつると分かっていて、予防せずに性交しているのだろうか。

(5)外国の感染者たち
 ・ CD4がたった2つしかないのに他の人と同じように暮らしているなんて心遣いが大変だと思う。たぶん人混みには行けないだろう。私はこのような人たちをかげからでも応援していきたいなと思った。
 ・ 毎日11種類もの薬を飲むなんて驚いた。がんばって何十年も長く生きてほしい。 
 ・ 生きる希望があればエイズでも長生きできると感心した。希望を失わずずっとがんばってほしい。
 ・ 感染者だが、ボランティアで感染したばかりの人の相談に乗ったりしてすごいと思った。私は今健康だからもっと助けないといけないと思った。
 ・ 私は今までゲイと聞くといやだったけど、一生懸命生きているので応援したい。

(6)エイズパニック
 ・ 全国的にエイズの学習をすればいいと思った。本当のことを言って説得すればいいと思う。県などでも会を開いてよく話し合うといい。
 ・ よく知りもしないで人を疑うのは恥ずかしいことだ。ぼくたちは、こんなことのないようにしたい。
 ・ 感染者を思いやる気持ちを持ってほしい。エイズの差別だけでなく、ふだんの生活の差別もなくしていかなければいけない。
 ・ 信頼ある世の中に住ませてあげたい。実名まで出すのは、やりすぎ。
 ・ 秘密をあばいてたくさんの雑誌に載せて、人々を困らせるだけだと思う。

5 次時(グループ発表後)の子供の反応<ワークシートより>
@ 感染者の不安や心の傷を早くなくしてあげたい。そしたら1日でも1分でも長く楽しく暮らせる。いろんな国で予防策をとったけど差別をなくすのが先。
 @ 前よりも詳しく知ることができた。他の人にも聞いてもらってうれしかった。これからももっと詳しくなるように勉強したい。

(1) 自分が感染したとしたら
 ・ 仲間がいれば生きる力がわく。仲間と一緒に生きてゆきたい。
 ・ いろんな人とのつながりを大切にして、仲良く信頼できる人をたくさんつくって、いい日々が過ごせるようにしたい。
 ・ 冷たい目で見る人もいると思うけど、温かく見守ってもらいたい。
 ・ 何もかも希望を持ってからできる。死ぬまでに明るく楽しく生きていたい。 
 ・ きっと差別されいやな顔をされるだろう。でも私はたくさんの人にエイズのことを知ってほしい。
 ・ あきらめず、元気になるぞという気持ちを強く持ちたい。
・ 自分の人生をしっかり自分らしく生きたい。ボランティアの人や友達、そして世界中のみんなと手を取り合って生きたい。

(2) 身近な人から感染を打ち明けられたら
 ・ その人を勇気づけられるよう、その人の味方になってあげたい。
 ・ 普通通りにつき合えば、十分喜んでもらえると思う。
 ・ 愛情でその人を支えられるのなら、薬もある方がいいけど、愛情がもっと深められる日本人が増えるといい。

(3) エイズに関する学習で、自分の生活に役立つものが見つかったか。
 ・ 友達をもっと大切にできるようになった。
・ 大きくなったら、看護婦さんやボランティア活動をしたくなった。
 ・ 私がもしこのことについて勉強していないなら、大人になってからも人を差別したと思う。
 ・ すこしでも多くのことを知り、世の中のことを理解したい。
・ 一つのことを知っているのと知らないのでは、すごい違いだということが分かった。知識を深め、いろんな人の支えになりたい。
 ・ 体の傷より心の傷の方がつらく、とてもくやしい。エイズの差別も他の差別も早くなくなってほしい。
 ・ 希望を持てばたくさんの勇気が与えられると思った。
 ・ 人の支えになるようにしたい。一人でも多くの人を救いたい。

実践2・〜低学年〜
1 主題名         びょうきになったら(第1学年 学級活動)
2 ねらい ロールプレイや話合いを通して、病気の人との接し方を考え、相手の気持ちを思いやりながら支え合って生活しようとする態度を養う。
3 授業の流れ
学 習 活 動 ・ 内 容 教 師 の 支 援
1 病気になった時の様子や気持ちを想起し、発表し合う。
・ してもらってうれしかったこと

・ してほしくなかったこと
・ 通院や治療の様子
・ 食事や運動の制限
・ 家族や友達への気持ち
○通院のために学校を休んだり、食事や運動が制限されるなど、普段と違う生活は不安を誘うことを確認する。
○最近欠席した子供や入院経験のある子供からも差し障りのない範囲で聞き、各自ができるだけ病者の気持ちに寄り添って考えることができるようにする。
2 病者に接する時に注意したいことや、病気にかかったらどうしたらよいかをロールプレイを通して考える。
・ 入院中の友達を見舞う時
・ 遊びに行ったら友達が病気だった時
・ 病気が回復して久し振りに学校に来た時
・ 授業中気分が悪くなった時
・ 熱が出たが家の人が留守の時
○各設定を簡単に説明し、机やベッド電話機など演技に必要な道具は自由に使うよう指示する。
○2人組で好きな設定をいくつでも選んでよいことを伝える。
○各コーナーでは他の組の演技に対する気付きや助言も教え合うよう指示する。
○病者の気持ちを思いやった演技を賞賛し、周囲の人々の優しい言葉掛けが病気の人の大きな支えになることに気付くことができるようにする。
3 「お見まいクイズ」を解きながら病者への接し方について話し合う。
@自分が風邪をひいていても行く?
A自分の好物を持っていく?
B病気の原因をしっかり聞く?
○回答の理由を発表し合う中から、相手の身になって考えることの大切さに気付くことができるようにする。
○病気には、感染するものやしないもの、慢性のもの、本人も気付きにくいもの、普通に暮らせるものなどいろいろあることを知らせる。
○病者や周囲の人々の写真を提示し、病気と闘いながら、毎日を明るく懸命に生きている人がいることに気付かせる。
○写真の人々の会話を想像することによって、信頼し合い支え合うことは互 いを癒すことを理解させる。
4 本時の学習で分かったことや気を付けたいことをワークシートにまとめる。
・初めて知ったこと
・驚いたこと など
○本時を振り返り、病気の人に対してできることを自分なりにまとめさせる。
○人はどんな時でも励まし合うことが大切だということを確認する。

4 子供の反応
(1)体験発表
  自分が病気になった時のことは、ほとんどの子供がはっきりと記憶しており、その時の様子や心情など、多くの体験談を聞くことができた。発表を聞いている子供たちも共感的に聞き入っていた。
  ・ お母さんが、ひと晩中看病してくれてうれしかった。
  ・ 呼んだらすぐにそばに来てくれた。
  ・ 呼んでも知らん顔されて悲しかった。
  ・ 早く治して遊びたかった。
  ・ 妹が何回も「遊ぼう。」と言うので疲れた。
  ・ 何回でも「大丈夫?」と聞かれて大変だった。
  ・ 「一人だけ病気になった。」と言われて嫌だった。
  ・ 点滴をしてつらかった。
  ・ 治った時、「やったー。」と思った。

(2)ロールプレイ
  どの子も大変生き生きと活動した。短い時間であったが、皆場面設定をよく捉え、工夫しながら楽しそうに演じていてほほえましかった。
 <主な演技>
  ・ 入院中の友達のお見舞い…さする。薬を飲ませる。学校のことを話す。治ってからの遊びの予定を話す。など
  ・ 家人が留守の時…祖父母に電話する。隣家の人を呼ぶ。じっとして待っている。110番に電話する。(?)など
 <ワークシートより>
  ・ (ロールプレイの時、)わたしは、「びょうきがなおったら、またいっしょにあそぼうね。」といいました。すると○○さんが、ちょっとうれしそうなかおでした。
  ・ だれかがびょうきになったときは、きょうれんしゅうしたようにしてあげたいです。
  ・ ぼくがびょうきのやくをしたとき、○○君と○○君が来てくれてうれしかった。

(3)クイズ
  @の問題では、初め8割の子供たちは、自分が無理をしてでも相手のことを心配し見舞ってあげるのがよいことだと考えていた。しかし、選択の理由を発表し合ううちに、考えが変わる子供が増え、「行ったら弱っている人に病気をあげることになる。」「無理して行ったら相手が心配する。」などの意見が次々に発表された。 人と接する時は、ひとりよがりな思い込みでなく、相手の事情を考るべきだということに、子供たちは気付くことができたようである。教師からも、相手を心配するあまりに取った行動でも、無理をすれば、相手が喜ばないばかりか心理的な負担を強いることもあることを話すと、納得した表情だった。
  AとBの問題は、全員が「いけない。」と答えた。主な意見は、「自分の好みを押しつけてはいけない。」「相手が嫌かもしれない。」「病気の人を疲れさせる。」などである。どの子も相手の身になって考え、自分なりの言葉で表現することができていた。
<ワークシートより>
  ・ わたしは、2もんしかせいかいしなかったけど、たのしかったです。あいてがきずつくようなことをしてはいけないというのがわかりました。(略)びょうきの人にめいわくをかけると、その人がなくかもしれません。 
・ (自分に)びょうきがあるときは、(お見舞いに)いかないほうがいいとわかりました。なおってからいくようにします。かぜをひかないように、ちゃんとうがいをします。
・ びょうきの人にいってはいけないことばなどが、よくわかりました。
・ あいてのきもちをだい一におもえばいいとわかりました。それと、じぶんのおもいどおりにしてはいけないとわかりました。

(4)写真の提示
 <川田龍平さんが友達と歓談している写真>
  ・ どの人が病気か分からない。病気のことは気にしていないみたいだ。
 <川田龍平さんがお腹に自己注射している写真>
  ・ 痛そう。大変。かわいそう。             など

(5)学習のまとめ
  ここでは、人と人との信頼関係は、決して一方的に成り立つものではなく、相手のお陰で自分も人を思いやる心・気遣う心を学んでいくことを確認した。子供の中からも、「病気の人のおかげで、優しい心を覚える。」などの発言があった。
  <ワークシートより>
・ やさしくするとげんきが出るし、やさしくして、げんきになってくれたらうれしいとおもいました。
・ たいりょくづくりをいっぱいして、びょうきにかからないようにしたいとおもいました。
・ わたしは、水ぼうそうにならないようにがんばったんだけど、おとうとのがうつって水ぼうそうになりました。(きょうのべんきょうで)気をつけていてもうつるびょうきがあるとわかって、ちょっとほっとしました。

※ 授業に先立って、松野正子著 「つみきのびょういん」(大日本図書)の読み聞かせと、病気にかかったり治ったりする理由を簡単に説明しておいた。また、翌日の朝の会では、「ぼくはジョナサン エイズなの」の読み聞かせをし、感想を発表し合った。この時の主な感想は次の通りである。
 ・ 治らない病気にかかって、ジョナサンはかわいそう。
 ・ ジョナサンの犬を恐がらなくてもいいのに。
 ・ 学校に来るなと言った人はいけない。
 ・ ジョナサンは、友達に病気の説明をしたり、本を書いたりしてすごい。
 ・ ジョナサンのお母さんも、他の子の親たちに説明をしたのでえらい。
 ・ エイズのことがよく分かった。

※ 授業後、数日経って、一週間ぶりに登校した友達が教室に入る場面を実際に体験した。子供たちからは口々に、「あの勉強と同じだね。」「練習した通りにやろう。 などの声があがり、教室中で拍手や温かい言葉掛けが沸き起こった。迎える方も迎えられる方も大変満足そうであった。子供たちは、些細な事でも経験した事なら自信を持ち、自然な態度で実行できる。今後も機会を捉えてはいろいろな場面を想定し、何ができるか問いかけるなどして経験を積ませたい。そして、将来予期せぬ出来事が起こった時にも経験の糸を手繰り寄せながら、自分なりの考えを持って冷静に対処できるよう育っていってほしいと思う。


V 終わりに

<子供と共に身に付けたいこと>
それぞれの人生をありのままに受けとめ尊重する態度 人間の性をまっすぐに見つめる態度
排除ではなく、共生の視点で。 人と人との信頼関係を基本に。
・ エイズは慢性病の一つである。
近年ではウィルス量の測定も可能となり、日和見感染の予防法 も整ってきた。
 ・ エイズは性感染症の一つである。
性交は人間の当たり前の行為であり、誰でもHIVに感染する可能性がある。
HIV感染の予防は知識があればできるものではなく、自分と パートナーとの人間関係によって左右される。

共に生きる よりよく生きる



・・・・・・・・・・・・* 共生社会の形成を阻むもの *・・・・・・・・・・・・

@ 古くからの慣習やパターナリズムの存在<社会の現実>
  ・ 男性に強さや主導性を、女性にか弱さや従順性を強いる固定的な性役割観
  ・ 病者や高齢者、同性愛者の性の軽視
  ・ 性感染症への否定的態度
   ・ 情報開示を阻んできた医療のパターナリズム
A 他人への強い依存感情の存在<個人の現実>
   →感染リスク行為の増大
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