阿部智子さんの人生(5年:道徳)
 
1 阿部智子さん・哲雄さん夫妻が撮った写真を紹介した。

 どの写真にも子ども達は真剣な態度で見入っていた。

 「ふるさとに帰れない」で、子ども達は、お骨になってもふるさとへ帰れない人がいることを学んでいるのだが、「野辺の送り」の写真と説明は、回復者の無念さが更にひしひしと伝わってくるものだった。また、閉ざされた世界の象徴でもある厚い壁に開けられた穴や、全国各地の石を集めて造ったという旧納骨塔からは、回復者たちの悲痛な叫びが聞こえてくるようだった。写真と共に、「2003年1月から9月までの間に菊池恵楓園では26名亡くなりましたが、その中でふるさとへ遺骨が帰ったのは、ただ1人です」という阿部さんの言葉も紹介した。監禁室の写真を見せた時は、「閉じこめて何がいいのか全然分からない。」などと、子ども達は憤りを露わにしていた。
 
2 これらの写真を公開しておられる、阿部智子さんご夫妻について、私の知っていることを伝えた。

 太田さんと同じ菊池恵楓園におられることや、年齢、裁判の原告となられたこと等を紹介した。(後日、ご夫妻の写真や、私がお会いした時の感想も補足した。)

3 阿部さんの講演のテープおこしを配布し、読み合った。そして感想を発表し合った。

<子どもの感想>
・阿部さんのお母さんはすごく子ども思いだったと思う。前向きに生きて、すごい。お母さんも言葉では言えないくらいの差別を体験したのだと思う。
・差別する人を隔離したい。許せない。隔離して勉強させたら出せばいいと思う。
(この意見には、随分反論が出た。反対の主な理由は、それも差別になるというものだった。)
・家族のためにそうしたんだけど、療養所に行く日、密かに行ったのは、できないことだと思った。ハンセン病がうつりにくいことは分かっていたのに、なぜ療養所に隔離し無理に働かせるのだろうか。閉じこめるのはあんまりだ。
・家族思いなのに、先生の差別にもあい、かわいそうだった。
・自殺しないでよかった。こうやってぼく達に過去のことも現在のことも教えてもらえる。
・阿部さんは差別されてもがまんしてたのは、なった自分が悪いと思ったんだと思う。でも、差別される人じゃなく、差別する人が悪い。
・ほんとに私は怒ってしまいそうだった。本当につらかったと思う。当たり前!裁判を開いた人たちは、本当に勇気が必要だと思った。私は本当に本当に心の中で怒った。
・とんでもないことだと思った。
・私は大人になって助けてあげたいと思う。
・差別される必要なんて全然ない。
・これを目の前で見たらどうだろう。自分だったらどうだろう。何でこうなったんだろう。
・先生にまで差別され、ショックだったと思う。自殺しなくてよかった。
 
 
子どもたちの心に、不必要な隔離政策への怒り、差別する人々への怒りがこみ上げているのが、授業をしていてよく分かった。また、阿部さんがあちこちで語って下さることに感謝する発言も多かった。

4 私が最近体験した学校の中の差別的な出来事をあげ、似た事象はいくらでも存在することを伝えた。そして、自分の中にある差別の心についても見つめてほしいと投げかけ、授業を終えた。

 この問いは、子ども達には難しいのではないかと思いつつも、そこを意識させなければ、せっかくの学びが生かされないと思ったので、終末で伝えておいた。まだまだ自分の生活や心の在り方を振り返ることができる子はごく少数だが、友達の意見やいろいろな学習と関わりを持たせて考えることで、少しずつでも差別や不条理に気付く力を養っていってほしいと思う。

<子どもの日記より>
・平和学習をしていなかったら、ハンセン病の回復者を差別していたかもしれない。
・差別の正体はたぶん、誰か強い人に言われたので、言うことを聞かないと仕事がなくなったり日本から追放されるかなと思い、差別が町中に広がったと思う。
・ハンセン病でも戦争でも差別はあり、様子は違うかもしれないけど、どっちもいけないと思った。発表の時、差別は憎しみなどの固まりだという人もいた。私は、周りにいくら注意しても分かってくれようとしない人とか、人の嫌がることとかする人はとてもキライで、その人をたまに仲間外れにしていたかもしれない。そういう小さなことでも差別は差別。絶対いけないことなので気を付けていこうと思った。

 
  

園と社会を分ける塀

旧納骨塔

現在の納骨堂


 後日、阿部さんの写真を子ども達に見せ、6匹の猫を飼っておられることなどを伝えた。猫の多さに子ども達は驚いていたが、「なぜかな?」と問いかけると、「心細いから。」「癒してもらいたいから。」という意見が出た。「昔の家は大家族だったから。」とか、「猫は家族。」とかいう意見も出た。療養所での堕胎については既習だが、ここでは敢えて想起させることはしなかった。
 
 また別の時間だが、黒髪小学校事件を紹介した。大人の無責任な行動や判断が、被害者の貴重な人生を狂せたということに、一同、大きな怒りを表していた。
 
 休み時間など、差別の問題についてもっと知りたいと言ってくる子どもが増えてきた。これからも差別を許さない心を失わず、しっかりとした足取りで、一歩一歩成長していってほしいと思う。


11月14日


阿部智子さんと私

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